修復された天井画 パンフレット 

修復なった天井画。

色鮮やかに蘇った161枚。「平成の復元」が江戸時代の面影を今に伝える。

開山1300年を迎えるにあたって

古来、寺院は僧侶の修行の場であった。やがて仏教の大衆化と共に、それは民衆教化の拠点という意味を持つようになった。 「荘厳」(寺院等の装飾を意味する)は、もちろん先ず第一に、仏に対する御供の意であるが、第二には、そこに参る人々がその美しさに心を打たれることによって、仏の威光を高めるという意味をもつ。以前の世において、日常を我々の時代よりはるかに地味な色彩の中に暮らしていた人々が、寺院の荘厳に仏の世界を感得していただろうことは、想像に難くない。
 当山、本堂外陣の天井画161枚が、160年の間にその色彩を失い、かろうじて描線が判読できるばかりのものになったのは、いつ頃のことだったろうか。 諸般の事情からあきらめていた天井画の「修復」が、仏縁をいただいて、小川尊一先生の御厚情によって実現可能となったのは、今より5年ばかり前のことであった。
 その後の経緯により、原画を模写することによって、「復元」という形をとることになったのだが、そのことは先生をはじめとするスタッフの方々が、江戸期の天井画に現代的な意味を見い出し、 そこに現代の「解釈」をこめて、再度本堂外陣を荘厳して下さったものだと言えよう。
「平成の復元」は当山にとってのみでなく、広く、ありかたく、意義深いものだと信じている。

 円城寺住職 天艸眞諦

修復前の天井画

外陣の天井画は色彩が失われ、描線がかろうじて残っていた。

  • 修復前
  • 修復前

製作工程

1枚ずつ丁寧に、色鮮やかな天井画を復元。

  • 1
    廊下側の天井画を一枚ずつ撮影し、復元原画とする。
  • 2
    資料等を参考に、原画の図柄を線描で再生する。
  • 3
    復元前と同サイズの杉板を製材し、乾燥させる。
  • 4
    ペーパーがけ下杉板にエポキシシーラーで素地調整を施す。
  • 5
    下地処理の上からジェッソを薄く塗り、乾燥させる。
  • 6
    線描で再現した原画を杉板に写す。
  • 7
    繧繝(うんげん)彩色絵具で彩色を施す。
  • 8
    完成した板絵に防水処理(フッ素コート)を施し、天井へ設置する。
製作過程

 
円城寺天井画修復会メンバー
【代表者】
天艸真諦(円城寺住職)
 
【制作者】
製作は元岡山大学教育学部教授小川尊一先生と特美卒業生を中心に作業にあたった。
小川尊一  松田和子   田中MAN  関根智子
山口千恵子  池上わかな  松尾紘子   ダバラガン
 
事務局
前田勝己  松田 巧
 
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板材製造提供者
天井画復元にあたり、江戸後期の原板と同様の杉板を調達製材乾燥し、寄進していただきました。
江与味製材株式会社(久米郡美咲町) 難波芳英
西武建設株式会社(岡山市南区) 湯浅康則